関東圏のBCNR33のオーナーさんから
排ガスの状態が悪く車検に通らないご相談がありました。
近くの整備工場では解決できず、
残り数日で車検が切れてしまうらしい。
車検が消えてしまってからの
臨時ナンバーでのご来店のご提案もありましたが、
臨時ナンバーには制約が多く、
使用条件の「車検のための最短での移動」には該当しそうでしたが
その方法の選択は避けるようご提案しました。
車検が切れた車を臨時ナンバーで自由に運転できるのであれば
「基本的に車検整備は不要」を行政が部分的に認める事にもなります。
遠距離の移動での使用が不正とみなされた場合、
無車検での走行になってしまう可能性がありハイリスクです。
ずっと昔ですが、
車検の切れた古いレア車輛に臨時ナンバーを装着で
警察の警告を無視してクラシックカーパレードに参加し
逮捕された事があります。
ですが、ご相談されたBCNR33のオーナーさんの動きは迅速でした。
「では、車検が切れる前にすぐに・・・」
翌々日には、遠路リオまでご来店されました。
帰路は、自分が最寄のJR駅までの送迎でした。
BCNR33には、純正マフラーと純正触媒が装着されていました。
良い子の仕様です。
これなら排ガスは基準値クリアに違いないはず。
車台型式は、「E-BCNR33」
製造の古い車は、
当時の排ガス基準がベースになるため
「E-」では、
一酸化炭素(CO)が4.5%
炭化水素(HC)が1200ppm
参考まで、「GF-BNR34」では、
一酸化炭素(CO)が1.0%
炭化水素(HC)が300ppm
で、当然ですが厳しくなっています。
早速、排ガス値を測定したところ
一酸化炭素(CO)が10%以上、
炭化水素(HC)が3800ppm
・・・・・・・・・
こ・・・・これは・・・・なに・・・・?
ご来店の際にすぐに気になったのは
アイドリングの不整脈です。
エンジンがブルブル震える感じでしたが、
オーナーさんからのお話では、
カムシャフトとカムスプロケットの交換で
バルブタイミングが調整されているため、
「アイドリングの不安定さは通常」と
装着した店舗から説明を受けています・・との事でした。
カムシャフトは通称「ポンカム」と呼ばれるタイプで
そのまま装着するだけでバルブタイミングが目標値になるため
「ポン」と付けるだけ・・・の意味での「ポンカム」ですが
取り付け時には、バルブクリアランスなどの調整が必要になります。
このままでOKのポンカムですが
そこからより正確に調整するために
カムスプロケットを使用する場合もあります。

調整式のカムスプロケットは↑のような構造で
スライドできる長穴内での固定位置で
バルブタイミングを変更する事が可能です。
「ポンカム」の多くは
一般走行を前提にしたタイプが多く、
高回転重視で低速域を犠牲にするような
サーキット仕様では無いハズで、
そのアイドリング不調が不思議でした。
もしかすると、カムスプロケットの調整域を使い
高回転でトルクを得ながらプログラムで
中低速も補えるような仕様とか・・・・。
しかし、排ガスのクリアが最重要目標のため、
現在の位置を確認し、
カムスプロケットの調整での排ガス値改善を試みようと
カムカバーを取り外してみたところ
なんと、穴位置はセンター・・・、
つまり、純正のカムスプロケットと同じ状態で
これは、そのままでも良かった仕様・・・?
しかし、タイミングベルトの硬化の様子があり、
オーナーさんに使用距離と期間をお尋ねすると、
距離は8万キロくらいで、期間は16年で、
ベルトごとすべて交換する事になりました。
数年前に、タイミングベルトの破損で
エンジンのオーバーホールまで至ったBNR34ですが、
タイミングベルトの使用距離は6万キロでも
使用期間は18年で、
修理の際に取り外したベルトの柔軟性は失われ
テンショナーベアリングはガラガラと音を発していました。
切断した理由はベルト本体なのかテンショナーなのか不明ですが、
タイミングベルトについては、
10万キロもしくは10年と考えた方が安全かも知れません。
BCNR33ですが
ベルト類は痛んではいましたが排ガスに悪影響な何かは
簡単には発見できませんでした。
カムスプロケットの調整が大きく移動していれば
元に戻してみる選択肢もありますが
センター位置、つまり純正と同じ。
しかし、アイドリングの感じはスーパーハイカム風・・・・。
!
もしや・・・・
タイミングベルトの掛け違いによる位置ズレで
ポンカムがスーパーハイカムになっているとか・・・。
ピストンの上死点で
INとEXのベルト位置を確認すると
・・・・・・・・・・・
ひとつズレていました・・・。
前回の交換時から6万キロもこの状態だったとは・・・・。
新しいタイミングベルト類の交換では、
RB26で事例の多いトラブルで
テンショナーを固定するためのボルト折れ、
対策ですべてのボルト類も新品交換し、
位置を合わせてエンジン始動すると
アイドリングは超安定。
排ガスは・・・
一酸化炭素(CO)が0.6%
炭化水素(HC)が160ppm
R35エアフロでのセッティングでは、
最新型の車輛での排ガス規制値でもクリアです!
BCNR33は中低速から乗りやすく
高回転でもスムーズに回る普通の仕様になりました。
オーナーさんは新幹線を含めたJRで最寄の駅まで、
そこからは自分の送迎でリオまで、
そして、仕様の変わったBCNR33でご帰宅されました。
長旅、お疲れ様でした。